なぜ、そのプレゼン資料は使えないのか?

営業成績がトップクラスのセールスパーソンと話す機会が、たまにある。
そういう人たちに、「どんな資料を作成しているの?」と尋ねると、共有資料(会社が用意した、全社員が共通で使う統一資料)以外は使用できないので、自分では作成できない。
しかし残念なことに、会社の共有資料はあまり役に立たないので、基本は我流のトークで、要所で共有資料を参照しながら、プレゼンを展開しているという。
会社が準備してくれた共有資料は、使えない・・・
なぜ、そんなことが起きるのだろうか?

使えない資料の特徴とは?

答えは簡単。

使えない資料の特徴は、自社の伝えたいことだけを、ガンガン説明していること。

商品の詳細な特長、開発プロセス、開発者の苦労話、詳細な料金表、利用規約など、自社が伝えたいことを、自社がアピールしたい順番で、びっちりと記してある。

そんなものに沿って説明をしていたら、お客様は途方もない気持ちになって・・・
「こいつはダメだな、時間の無駄だ」と早い段階で烙印を押す。

トップセールスは、資料を見ればそんな悲惨な状況を一発で察することができるので、会社が準備した資料は、自分のトークの必要な場所で、適宜利用するに留める。

では、使える資料とは何か?
使える資料を作成するには、どうしたらいいのか?

資料の目的を設定する

皆さんが資料作成をする時、その資料の「聞き手は誰で」、プレゼン後に「どう動いてほしいのか?」を、明確に設定しているだろうか?
トップセールスは、常に、この資料の(=プレゼンの)目的を明確にしている。
ここを不明確にしたまま突き進むと、自分が会社にアピールせよと言われいてることを、ツラツラと書き連ねた資料が出来上がってしまう。

まずやってほしいのは、紙と鉛筆を持って、「聞き手は誰で、どう動いてほしいのか?」を明記すること(この際には、「6W2H※」も書き連ねておきましょう)
もしあなたが、どの顧客に対しても同じ資料を使いまわしているのであれば、それは上記のような「資料の目的設定」が全くできていないことになる。
※When(いつ)、Where(どこで)、Who(誰が)、Whom(誰に)、Why(なぜ)、What(何を)、How(どのように)、How much(いくら)

聞き手を分析する

資料の目的を設定したら、次に、聞き手を分析する。分析のポイントは、以下の3点。

① 聞き手が、あなたの提案について、賛成か反対かどちらの立場かを推察する。
②聞き手が、 何を知っているか(何を知らないか)を分析する。
③ 聞き手が、何に関心を持っているかを分析する。

上記によって、資料に含むべき情報や、話の順序が大きく変化する。

まず、①について。聞き手の立場によって、資料の構成が大きく左右されるのは言うまでもない。

次に②について、聞き手が既に知っていることばかりを説明したら、「当たり前のことをクドクドと・・・」、「こいつ、俺のことをバカにしてるんじゃないか?」という感情を抱かれかねない。
逆に、聞き手が知らないこと、つまり、話し手の社内では常識だけれど一般常識ではないような部分の説明を飛ばしたり、社内専門用語を多用したりすると、聞き手は置いてけぼりになり、内容は理解不能。一気に興味を失われてしまう。

そして、③の「聞き手の関心」についての分析が、一番重要だと私は思う。事前にヒアリングができるのがベストだか、それが無理な場合は、聞き手の企業のHPなどを参照し、ミッションやビジョン、事業計画などから、聞き手が高い関心を示しそうなことを推察する。そして、特に重要と思われる論点を選び、具体例を示しつつ、相手が食いついてくる順番でストーリーを組み立てていく。

・・・と、しれっと書き流してみたけれど、上記の「論点を選び、ストーリーを組み立てる」という点で、ロジカルシンキングのピラミッドストラクチャーや、ストーリーラインなどの考え方の知識が必要となってくるので、ご興味のある方は、「ロジカルシンキング, プレゼンテーション」などをキーワードにして、本を一冊読んでみてください♪

このように、資料の目的設定や聞き手の分析が、資料構成を考える上での大前提となる。

冒頭で、トップセールスが「会社が用意している共有資料」が使えないというのは、共有資料は、その目的や聞き手の分析を、個々の案件レベルにまで落とし込めていないからだ。
しかしこれは、当然なこと。共有資料である以上、個々の案件に沿ったレベルに落とすのは不可能である。
その結果、自社の伝えたいことだけをガンガン説明する「使えない資料」が生まれてしまった。。。

足りない分を自分のトークでカバーしながら、「使えない資料」を上手く活用する。
しかし、これはなかなかにハードルが高く、これができるのがトップセールスであれば、それはもともと地頭か良いか、相当な努力を積んできた人に限定される。
だから、トップセールスなんだ!と言われれば、当然であるが・・・
では、そのレベルに達していない人は、どうすればよいのだろうか・・・
個々の社員が、個々の案件に合わせた良質な資料作成ができる能力を身に付けたら、それは会社にとって、一番の武器になるはず。
また、この能力を身に付ければ、共有資料しか許可されていない環境でも、それを使いこなせる能力も自ずと付く。

そんな能力を、多くの人に付けてもらいたい!などと、大それたことを思いながら、これからもブログを書いていきたいと思います♪

 

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投稿者プロフィール

maki-ichikawa
市川 真樹プレゼン資料コンサルタント
プレゼン資料作成のスペシャリスト。
見栄えを上げる「パワーポイント術」、人や組織を動かす「スライド理論」、魅せる×伝わる「デザインの知識」をベースに、スライド作成代行サービス、企業研修・セミナーを展開中。