スティーブ・ジョブスの「画面切り替え」と「つなぎ言葉」の考察

スティーブ・ジョブスの「画面切り替え」と「つなぎ言葉」の考察

プレゼンテーションが得意な人は、「スライドを切り替えるタイミング」や、「つなぎ言葉」の使い方が、非常に上手い。

何かの本で、「伝わる」は「つながる」であると読んだことがある。

なるほど、その通りだと思った。個々のページにどんなに説得力があっても、それらの「つなぎ」部分がスムーズでなければ、聞き手の腹には落ちない。

「なんだか不自然な流れだな」「唐突すぎるな」などと思われてしまったら、そのプレゼンは、途端に説得力を失う。

では、スムーズにつなぐためにはどうしたらいいのか?

・・・恐らく、スライドを切り替えるタイミングや、つなぎ言葉の使い方には、法則がある。

逐一挙げていったら膨大な量になるだろうけれど、パターン化すれば、数十パターンに収まるのではないか?

ならば、とりあえずやってみよう。

餅は餅屋に聞けということで「プレゼンの名手」でググると、スティーブ・ジョブズが相変わらず君臨していた。

ということで、彼の有名なプレゼン「iPhone」発表の冒頭(もう12年も前になるのか!)を見て考えることにした。

まずは、以下の冒頭のテープ起こしを一読いただきたい。

「iPhoneプレゼン」冒頭のセリフと画面切り替え

ジョブズ登場、スライドはアップルのロゴマークのみ

2年半この日を待ち続けていた。
数年に一度、全てを変えてしまう新製品が現れる。
それを一度でも成し遂げることができれば幸運だが、アップルは幾度かの機会に恵まれた。

画面切り替え①
1984年、マックを発表。PC業界全体を変えてしまった。

画面切り替え②
2001年、初代iPod。音楽の聴き方だけでなく、音楽業界全体を変えた。

画面切り替え③(アップルロゴマークのみのスライドに戻る)
本日、革命的な新製品を3つ発表します。

1つめ。
画面切り替え④
ワイド画面、タッチ操作のiPod。

2つめ。
画面切り替え⑤
革命的携帯電話。

3つめ。
画面切り替え⑥
画期的ネット通信機器。

画面切り替え⑦(厳密には、前スライドの内容をアニメーションで切り替えている)
3つです。タッチ操作iPod、革命的携帯電話、画期的ネット通信機器。

画面切り替え⑧ ⇒アニメーションでクルクル3機器が回る
iPod、電話、画期的ネット通信機器。iPod、電話、お分かりですね?

回転のアニメーションが止まる
独立した3つの機器ではなく、1つなのです。

名前は、iPhone。
画面切り替え⑨、セリフと同時に、iPhoneという文字が投影される

アップルが電話を再発明します。

これです。
画面切り替え⑩、レトロな機器が登場
(会場から笑い)

冗談。一応ここに実物があるけど・・・・

 

と、プレゼンが続く。

ここで使用されている、スライドの切り替え方法を分析すると、4つのパターンが浮き上がった。

パターン1:前置きなしの切り替え

上述の画面切り替え①②③⑦⑧にあたる。

切り替え時に、特に前置きはせず、話しの流れでスライドを切り替えるパターンだ。

スライドが切り替わったことを感じさせないほどスムーズに、説明の流れに乗せて切り替えを行うことで、聞き手の思考もサラサラ流し、情報の意味を体感させることができる。

パターン2:番号を述べてからの切り替え

上述の画面切り替え④⑤⑥にあたる。

これは、スクリーンに投影するプレゼンのみならず、印刷資料を用いて対面の商談を行うときにもよく使うパターンである。

今回のように、各項のスライドを見せる前に、まず最初に「1つめ」と言ってから、スライドを切り替える(またはページをめくる)方法だ。

前置きとして番号だけを述べることにより、まずは話し手自身に注目を集める。

そして、聞き手の期待感が高まったところで、ドヤ顔でスライドを切り替えることで、情報の訴求力を高めることができる。

パターン3:決めセリフと同時に切り替え

上述の画面切り替え⑨にあたる。

これは、プレゼンテーションの肝となるキーワードや、キーメッセージを言う場合に有効なパターンである。

今回も、「iPhone」という言葉を初めて披露する際に、使われている。

耳で聴く言葉と、目で読む言葉が同じで、それが一緒に飛び込んできたとき、その言葉は、聞き手の奥深くまで染み込んでいくため、これぞ!という決め文句を言い放ちたいときに、非常に有効である。

ただ、何度も使用すると効力が薄れるので、そこは要注意。過ぎたるは猶及ばざるが如しである。

パターン4:指示代名詞を述べてからの切り替え

上述の画面切替⑩にあたる。

「それが、これです!」「その結果が、こうです!」というように、指示代名詞で前置きをしながらスライドを指差し、注目をスライドに集めてから、スライドを切り替え、その後はスライドのインパクトに聞き手を委ねるというパターン。

言葉で説明するより、スライドで説明するほうが強烈なインパクトを与えられる場合に用いられるため、写真やグラフなどが貼られることが多い。

ジョブスは、レトロな機器の写真を張り付け、笑いをとる手段として使っていたけれど、

プレゼンの冒頭で共感を得るために、残念な例(白黒のイメージ写真など)を見せて危機感を煽る場合などでも、よく使われるパターンである。

「つなぎ方」を意識する必要性

ジョブズのプレゼンの冒頭3分間だけでも、4つの画面切り替えとつなぎ言葉のパターンが登場した。

ジョブズのプレゼンは、SHOW的な要素が強く、ガチの商談プレゼンには応用できないと思われるかもしれないけれど・・・

今回のスライド切り替えのパターンは、対面の商談時、お客様の目の前で印刷資料をめくる時にも、効果を発揮すると私は思う。

つなぎ言葉も、今回は「番号」や「指示代名詞」を使用していたが、様々な「接続詞」も、同様に活用できるに違いない。

また、章が変わる際は、前章の内容の「まとめ」を前置きとして、次章のスライドにつなげていくパターンをよく見る。

高度なテクニックとしては、前のスライドの言葉の残像を、次のスライドにつなげていく方法だってある。。。

残念ながら、これらの型を整理しきれていないので、クリアな解決策をご提供できていないわけではあるけれど・・・

大切なのは、スライドの「つなぎ方」を意識するということ。

プレゼン資料を作成するときは、その説明を口ずさみながら、「つなぎ方」に注意を払って作りこんでいくと、話し手の説明と聞き手の理解が同時進行するスライドが出来上がる。

この「つなぎ方」については、感覚だけに頼っていたけれど・・・深堀して考えていきたいと思います♪

 

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投稿者プロフィール

maki-ichikawa
市川 真樹プレゼン資料コンサルタント
プレゼン資料作成のスペシャリスト。
見栄えを上げる「パワーポイント術」、人や組織を動かす「スライド理論」、魅せる×伝わる「デザインの知識」をベースに、スライド作成代行サービス、企業研修・セミナーを展開中。